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「私、一度北村さんに謝らなきゃって思ってたのよ」
突然の天城先生の言葉に、僕はびっくりして、思わず顔をまじまじと見てしまった。
やっぱり美人だなぁ。
あの、ルミと同じ生物とは思えない。
「北村さんが、ガーゼ交換の介助についてくれた時、ちょっとキツい言い方しちゃったでしょ。
あの日、私、ちょっと機嫌が悪くて、だから、八つ当たりしたみたいになっちゃったのよね。
職場に感情を持ち込んじゃ駄目だって、反省してたの。
いつか必ず謝らなきゃって。
ごめんなさい」
頭を下げられて、僕は更に驚いた。
ルミにはもっとキツい言い方されてますし、思いっきり感情的ですから。
僕は体の力が抜けるのを感じた。
天城先生に抱いていた苦手意識が、無くなっていくのを感じる。
「や、あの時は、僕が、勉強不足だったんです。
横多先輩と事前に練習もしたのに失敗しちゃって。
新人だからって言い訳にならないです」
慌てて言うと、天城先生はほっとしたように微笑んだ。
可愛いなぁ。
「新人さんを萎縮させたと思って気にしてたの。
あの後、私と話す時、引いているみたいだったから」
「や、僕仕事が出来なくて、毎日何かしら怒られるんで、自然にびくびくしちゃって」
そう言いながら、自分で自分が情けなくなる……
天城先生も情けない男だって呆れてるんだろうなぁ。
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