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[13]A(アキラ)
ジュンが急に進学するかもしれないと言ってきた。
まあ、今のジュンならその選択でもいいのではないかと思えた。
多分、就職しても長くは続かないだろう。
じっくり資格でも取るほうがいいのではないかと賛成した。
ただ、通学は難しい距離。
当然、毎日会える訳にもいかなくなるだろう。
長い目で見ればそんな時間も、将来の二人にとって大切なものになるかもしれないと考えるようにした。
アキラは今の仕事が軌道に乗って、各地に支店を出すようになると、市場調査のためにあちこちの地方に走りまわる回数が増えた。
もちろん人事などの重要な役目も担っていたので、忙しくやり甲斐のある立場に誇りを持つようになっていた。
ジュンの誘いで家に泊まりに行った際も、街金融屋時代には後ろめたかっただろうが、今や自信を持ってジュンの母に名刺を渡すことができた。
心配していたジュンの家族との関係も、良好であるように感じ取れた。
ジュンが進学してしまうと自動車教習所に通うのも手間になるだろうから、今のうちに自動車免許は取得しておくようにとアキラが教習所代金を負担した。
(俺がジュンのこれからを守って行くんだ。)
ジュンを恋人以上の存在として、これから養って行こうという自覚を感じていた。
甘やかせているせいか、ワガママな彼女になりつつあるが、その辺も含めて先行投資。ガマンして、できるだけの事をして尽くせば、いつかいい彼女に変身してくれるだろうと願った。
多分、ジュンのワガママは、突如現れる情緒不安みたいなものだから、大人になれば自然に消えてくれるだろうと信じた。
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