第二章[愛の実]

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 ジュンの友達のミカにも、内緒でよく相談を聞いてもらっている。    恋人の前での顔。  友達の前での顔。  そんなジュンの顔の違いも知っておきたかった。    ミカに相談することで、心配は少なくなった。  ミカはいいコだなとつくづく感じた。  親友のジュンの事はもちろん、アキラのことまでも気遣かって話をしてくれるのがよくわかった。    ミカはしっかりした考えの持ち主だなと思った。  そういう部分は同じ歳とはいえ、恋人には欠けているなと比較してしまう。    持って生まれた性格もあるが、やはり環境によってしっかりしたり、ワガママになったりするのだろうと思えた。    面接試験を受けるために、ジュンが母親と、希望している専門学校へと向かった。  駅まで迎えに行くとジュンの母に  「これからも支えてやってね。」 と言われた。    進学はあっさりと決まり、ジュンが一人暮らしする場所を探さなければならなくなった。    ジュンの親はあまり仕送りに負担をしたくないみたいだった。    とはいえ、一人暮らしにはお金がかかる。    正直言えば、ジュンは家事や料理もできないので、どこか下宿先を探したほうがいい気がしたのだが、一人暮らしへの憧れは誰でも抱くところ。  一人暮らしによって、ジュンの自立心が成長することに期待した。    ジュンの親から住居探しを委ねられた。    忙しい仕事に都合をつけて休みをとり、隣県のその都市で不動産屋巡りをした。    専門学校近くの家賃の高さは馬鹿にならず、安い物件は通学に不便になる。    六件目の不動産屋で、いい物件を見つけた。  手付金を支払って、いよいよジュンが一人暮らしするんだなと実感してきた。    ジュンの、あれがしたい、これがしたいと、一人暮らしに興奮するその笑顔が、妙にアキラの目に焼き付いた――。  
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