第二章[愛の実]

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[14]J(ジュン)    卒業式の日が近づいていた。    バイトに行ってるとアキラには言っておいて、昼間は同じようにヒマを持て余す友達を見つけて遊んでいた。  でも毎日ヒマな友達ばかりではない。  どうしても一人で過ごさなければならない時は、ネットのカキコミで時間を費やした。    『会って楽しいことしようよ。お小遣…』    ジュンがよく使うサイトには、そんなカキコミが溢れていた。  (ウリ(売春)か…。)  ジュンの周りでは噂くらいはあっても、実際にウリをしてるような友達は多分いない。    きちんとバイトしてる友達や、親の車を自由に使える友達を見ていると、お金があればと思うことが多くなった。    サイトを利用していると、ただの文章なのに、実物はどんな人なのか興味を持ってしまう相手が現れる。    ジュンは最近「オサム」という相手とよく会話していた。    いつかアキラと喧嘩になって寂しい時に、「オサム」は優しい言葉で慰めてくれた。    アドレスを教えた。    「オサム」は結婚していて小学生二人の子供がいるようだ。  なぜか妙にガツガツした若い男より、安心できる気がした。  自分にアキラがいるように、この人にも家庭があるのだから、お互いの事に深入りするようなこともないだろう。    アキラが二泊で出張に行っている時に、友達から遊ぼうと誘いがあった。  いつもはジュンがヒマを潰すために遊ぼうと誘っているばかりなので、断る訳にもいかない…。    財布の中には千円札が一枚しかなかった。  アキラにはバイトをしてると言っているので、お金が無いなんて言えるはずもない。    「オサム」に話してみた。  「オサム」はお金を貸してくれると言った。    その夜、ジュンは母親にアキラと会ってくると言って家を出た…。  
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