第二章[愛の実]

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 卒業式の当日になった。    朝から雨が降っていて、なんだかとても悲しく感じられた。    ジュンと母親を、アキラが学校まで送迎してくれた。    制服を着るのも最後かと思うと感極まって、三年間普通に見てきた学校の景色が、こんなにきれいだったのかと思えた。    卒業式が終わると母親だけアキラに迎えに来てもらって、みんなが集まる教室へ行った。  写真をたくさん撮ったり、寄せ書きを書いたりして、ワイワイ騒いだ。    盛り上がりついでに、進路と夢、そして好きな人の名前をみんな順番に言ってみようと、そんな展開になった。  本気かふざけてかわからないが、好きな人の名前にクラスメートが登場したりもして、クラス中に「おおーッ」という呼応や拍手、悲鳴まであがった。    ジュンの順番。  好きな人は…。  やはりアキラしかいない。    待ってましたとばかりに友達が冷やかしの指笛を鳴らされた。恥ずかしかった。    楽しいお別れ会も解散となって、アキラに迎えに来てもらった。    アキラと初めて会った時も制服姿だったなと思うと、制服を今日ばかりは着替えるのが惜しくなった。    制服のままデートした。  そしてセックスをせがんだ。  アキラは、女子高生だから私を選んでくれたのではないとわかってるけど、女子高生の自分をしっかり覚えておいて欲しいと思った。    脱ぎ切らずに、制服がはだけた恰好で愛して欲しかった。そのままの恰好で力いっぱい突いて欲しかった。    歓喜の中、憧れでカワイイと言われたかった女子高生の自分ともお別れだなと思った。    サヨナラ、制服。  サヨナラ、私――。  
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