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第三章[闇の扉]
[1]J(ジュン)
車は、いつの間にか見馴れた街に帰って来ていた。
京都にいたことが、ついさっきだったような気がした。
まだ昼過ぎの時間だったので、ミカに連絡して家に居ることを確認すると、お土産を届けに行った。
ミカは、ジュンとアキラの旅行帰りの姿を見るととても羨ましがっていた。
ミカとアキラの会話も弾んでいて、親友と彼氏が仲良くなってくれるのは悪くないなと思った。
家には大量のお土産を下ろした。
もう帰宅するつもりだったが、あいにく誰も居なかったので再びアキラの車に乗った。
写真店に舞妓姿を写したカメラを持って行った。
仕上げは一時間後くらいと言われたので、それまで遅い昼食を取ることにした。
受信箱に貯まっていたメールの返信をしながら、パスタを口に押し込んだ。
旅行の疲れか、あまり食欲はなかった。
向かいに座るアキラは、よほどお腹を空かせていたのかバクバク食べていて、その表情がほほえましかった。
食べ切れないパスタの乗った皿をアキラに渡したら、すぐに平らげてくれた。
こういった何気ない恋人との時間が、幸せだな、と感じられるのはアキラのおかげもあるけど、愛されている自分の魅力があってからこそだと、少し思うようになっていた。
写真店に行ったところで、アキラもかなり疲れていたのか、ちょっと眠りたいと言ってきた。食欲の次は、睡眠欲が訪れたようだ。
受け取った写真を見るのは、後の楽しみにして、しばし二人で仮眠をとることにした。
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