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やっと空が薄暗くなって頃だったが、ホテルまでたどり着くだけの元気さえアキラに無いようで、運動公園の前で尽きたようだった。
運動公園の隅に、ひと気のないスペースがあったのでフラフラしながら駐車すると、アキラは寝息をかくまで時間がかからなかった。
ジュンも、シートを倒すといつの間にか寝始めていた。
もちろん、アキラの腕の中で。
二人はお互いの匂いを、体の感触を、暗闇の中でも解り合えるだけの愛があった。
寝ている時でもそう、目が開かなくても意識があれば互いを抱きしめ、愛を確かめ合えた。
愛し合っていた。
愛し合えたこそ、山あり谷ありでも二年近く付き合ってこれたのだから。
ジュンは夢を見ていた。
…アキラの姿。
その死角でジュンは派手な化粧を落とし、真面目な恰好をしようとアタフタしている。
なのに化粧はなかなか落ちてくれず、忙しいのに携帯電話のバイブモードで動き続けている。
早く、行かなきゃ。アキラの前では幸せに溢れてる自分の姿になって会いに行かなきゃ。
慌てるジュンの肩を誰かが叩いた。
振り返るとそこに迫る来るのは、いくつもの顔の自分たち。
いろんな化粧をしていた。
いろんな表情をしていた。
私は、いろんな私に襲わる。
助けて、助けて。
睡眠の中、ジュンは叫んでいた――。
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