それはまだ種にも及ばなくて

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「いや、愁だろ」 キョトンとして相手が答えた。 「俺ずっと自分の事、愁也だと思ってたんだけど…」 そう言って机の中のノートを適当に一冊取出し、『竹村愁也』と言う自分の名前を見せてやった。 相手は突然笑い出した。 「んな、冗談で言ったのに面白い奴」 今ので本気で疲れた。 とにかく寝かしてほしい。 「まぁ呼び方なんてどうでもいい」 それだけ言うともう机に俯せで寝てやった。 相手の声が聞こえなくなった。 もう何処かに行ってしまったのだろう。 ふと今日の一時間目の授業の教科が何か気になり、身を起こしてみると驚いた。 徐々に人が増えてきて煩くなってきた教室。 それはいつもの事だから別に驚かない。 俺が驚いたのはもっと他のことだった。 .
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