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「お前まだ居たの?」
目の前には何処かへ行ったと思ってた『奴』が居た。
正式に言えば俺の前の席に横向きで座っている。
「そこまでして俺に何か用ですか?」
「用はないけど、お前見てると面白い」
やや分かりやすく嫌な顔をしてやった。
早く朝のSHRのチャイムが鳴ってほしい。
こんなことを願うのは初めてに等しかった。
でも今日はいつもよりもより早く学校に来てしまったため念願のチャイムまでまだ3分もあった。
「まことに失礼ですが自分のクラスに帰ったらどうですか?」
「本当失礼だな。同じクラスなのに…あ、それ冗談?」
クラスに『奴』のような顔をしたやつは記憶になかった。
いや、自分の記憶に頼るのはやめたほうがいいのかもしれない。
よくよく思えば自分がぼんやりでも覚えている顔は元同じクラスだった数人しかいない。
第一、朝一番に顔をあわす家族の顔さえも今はぼんやりしている。
時々本気で自分の記憶力に不安になる。
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