2.

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「そう、得意なんだよねー……得意だから久遠先生にお近づきになれないんだよね……」 「……? 何で?」 「だってだって、『先生、ここ解けないんで教え下さい』って事で押し掛ける方が簡単に近付けるじゃん!」 「近付いてどうすんのさ」    無駄に意気込んで語る戸田の様子に若干戸惑いながら聞けば、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに席を立って近付いて来る。嫌な予感。   「そりゃアンタ、決まってるっしょ」    フフフ……と妙な笑いと共に声を落とす。その落とし加減が何だか自分の判断ミスを予期させた。   「作品のネタ集め」 「サクヒン……?」    ――一体何の?    聞きたい気持ちを抑える。これ以上踏み込んではいけない気がしてならなかった。    が、どうやらその一瞬だけかすめた好奇心が顔に表れてしまっていたらしく、戸田はそれをきちんと受け取って、続けた。   「もちろん、BLの作品!」    もう一度、戸田はフフフと笑みを浮かべる。いや、どちらかと言えば俺の脳内でそれは『腐腐腐』と変換されていた。    ――そう、彼女は最近何かと話題になってたりする“腐女子”なのだ。   「眼鏡にスーツ、そしてあの顔立ち! あれ見て萌えない訳がない! しかも教師! 設定が無限に広がる職業……もういたでりつくせりだっちゅうの!」 「そ、そう……」    何だか自分の世界へトリップしてしまった戸田に若干引きつつ、どうしたものかと途方に暮れる。   「まあ、問題は先生がどっちかだよねー。鬼畜眼鏡ってのもあるけど何かMっぽいし、そうなるとツンデレかな……あーでも、誘いな雰囲気も否定できないなあ」 「…………」    未だマシンガントークを続ける戸田。周りの視線が痛い。    
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