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 普段の他愛もない会話ではぞんざいに突っ込み盛大に溜め息を吐くくせに、生徒にとって真面目な内容の場合にはそんな顔を一切見せない。  教師としては当然の行動で、もちろん大抵の先生はそうしてくれる。でも、生徒にはその先生がどことなく面倒臭がってるのを感じ取れたりするのだ。    大人への階段を上りつつある中途半端で繊細なお年頃である高校生は、感じ取ってしまったら最後、相談しにくくなってしまう。    だから、本人が意識しているのかどうかは分からないが、俺を始めとする生徒にとって聞けば最後まで面倒な素振りや気配を見せずに答えてくれる、理解するまで付き合ってくれる教師と言うそんなちょっとした事が嬉しかったりするのだ。    だが、いくら何でもほぼ毎日この数学準備室に通う生徒は俺ぐらいのもので、時々だが面倒臭がられてないだろうかと心配しなくもない。    じめじめと梅雨の入りを感じる六月。  およそ二ヶ月間も数学を教わりに通う様になったのには大きい様なそうでもない様な理由があったりする。    
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