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――2012年10月5日
俺は今、病院に居る。
記憶喪失らしい。
でも忘れてるのは自分の名前とあの子の名前だけだ。
「遼哉くん。君のお姉さんの名前は分かるかい?」
医者に聞かれた。
「…紗季。だった気がします。」
俺は姉貴の名前はもちろん、親や友達、学校の先生の名前まで覚えていた。
「じゃあ、君の幼馴染みの女の子の名前は?」
この質問にはいつも答えられない。
そもそも、俺に幼馴染みの女の子なんかいたっけ…?
「わかりません…」
こう答えるといつも激しい頭痛に襲われる。
医者だってもう飽きれ顔だ。
もう何日、いや何ヵ月も質問している。
だが俺はその子がわからない。
医者は溜め息をつくとこう言った。
「そうか…。君の記憶、どうにかして取り戻せるといいんだけど。」
そのセリフ、何回も聞いたよ。
「失礼します…」
車椅子にのり、診察室をでた。
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