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建物の中は見かけによらず少し狭いような気がした。
部屋の中心で何やら水樹と村人らしき人たちが集まり慌ただしくガヤガヤと話している。
『お~い、水樹。』
『あっ!慶~!遅いよ、なにやってんの!』
『ああ、ゴメン。ところでどうかしたのか?何か騒がしいみたいだけど…』
『慶、大変なの!なんか…逃げたみたいなの。』
『へ?……逃げた?』
『うん…』
『すまんのぉ、ワシらが少し目を離した隙に…』
『え?婆さん………誰?』
『慶、この人はこの村の長老のキミナ婆さんだよ。通称、キミ婆。』
『へぇ、ど、どうも。慶と言います』
『ほっほっほっ、よろしくな』
(うーん、この婆さんは恐らく…カメかフクロウかな)
慶は何となく想像してみた。
『ところでキミ婆、その子どっち行ったか分からない?』
『そうじゃのぉ…隣村の方は若い衆がいたからのぉ、裏の方から逃げたかもしれん。』
『そっか、ありがとうキミ婆。慶っ、裏の方に行くよっ』
『ああ、分かった。』
さっそく行こうとした時、長老に呼び止められた。
『これっ、待ちなさい。二人だけで行くのは大変じゃ、流牙家に手伝って貰いなさい。手配しとくから』
『そうだね、カレンとカリンちゃんならきっとスグに探し出してくれるだろうしね』
『え?流牙家って?』
『安心して、私の友達だから。さっ、行くよ』
『気お付けるんじゃぞ』
『うん、行ってくるね』
そう言って水樹は慶の手を掴んで建物をあとにした。
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