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チュン、チュン、チュン…スズメの鳴き声が響く朝、山の中のひっそりとたたずむ木造住宅の一室で須藤 慶は目覚めた。
『ふぁ~、…もう朝か…って寒いっ。』
そう、季節は冬。1月1日元旦である。
『慶~、早く起きなさいっ。』
母親が1階からイラつきながら慶を呼ぶ。
『今日は正月なんだからもう少し寝るよ、だから朝飯はいらないから。おやすみ』
慶が2階から叫ぶと、返事はすぐに返ってきた。
『あんたの朝飯はどうでもいいから、今日は美佳ちゃんと鏡華ちゃんと一緒に初詣に行くんじゃなかったの?』
『…………そうだった!ヤバい時間がない、急いで準備しなきゃ!』
慶がドタバタやっていると不意に外から内臓に響くようなものすごい低音が聞こえてきた。
『げっ、もう来やがった…』
と慶がつぶやいていると、
「ピンポーン」とインターホンが鳴り響く。
急いで下に降りてみると、もう美佳と鏡華が玄関にいた。
『あっ、慶兄だぁー。おはよー☆』
鏡華が嬉しそうにこっちを指差した。そして今度は美佳が
『あんた、そんなとこに突っ立って何してんの?』
『えっ、お、お前ら来んのまってたんだよ』
『ふ~ん』
美佳がジト目で見つめる。
『…何だよ』
『あんた凄い寝癖なんだけど』
『へっ?』
急いで鏡で頭を確認……あぁ、なんかライオンがボコボコにされたような頭になってるよ…
『どうでもいいからはやくしてね、外で待ってるから』
と言って美佳たちは外に出ていった。
10分位してようやく慶が出て行くと、
『遅い!』
美佳が怒り気味でいった。
『わりぃ、予想外に寝癖が反抗的で…』
『まったくもう、じゃあ行くよ』
と美佳が言った瞬間いきなりものすごい低音が再び鳴り響いた。
『ってオイッ、まさかバイクで行く気か?』
『当たり前よ』
『周りの人の事考えろっ!、年寄りなんか心臓麻痺おこすぞ!』
『大袈裟ねぇ、これくらいで』
『お姉ちゃん、ぶっちゃけ、この音は鏡華もウルサイと思うよ』
と鏡華が言った。思わぬ伏兵に美佳も渋々歩く事にきめた。
普段見慣れた神社までの並木道を歩いていると慶はふと二人の服装に目がいき声をかけた。
『なぁ、何で鏡華ちゃんは晴れ着姿なのに美佳は作業服を少し洒落た感じにした服装なの?』
『バイクの手入れが忙しくてそんな時間なかったの!それに私には着物なんか似合わないし…』
『ふ~ん、そうか、残念だな、お前の晴れ着姿見たかったのに』
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