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『す・き・焼・きが出来たわよっ!!』
そう怒鳴りながら、いきなり水樹が勢いよく部屋に入ってきた。
そしてテーブルの真ん中にバシッと荒立たしげに鍋を置いた。
『み、水樹!鍋がこぼれるじゃないか………って肉がこぼれてるし。もっと優しく置か……』
慶が水樹を注意しようとしたが止めることにした。
まぁ、正確に言えば出来なかったのである。
理由は
『……………。』
『……………。』
水樹と姫子の二人が無言で睨みあっていたのである。ただし、普通に女の子同士睨みあってケンカしてるという雰囲気ではない。
それならば慶も二人の仲裁に入れたのだが水樹は「それは私の獲物だ!手を出すな!」といった感じで相手を圧迫するような目付きで睨みつけていて、何より恐ろしいのは普段は見せない鋭利な刃物の様な爪をギラつかせていた。
対する姫子はそんな水樹に少しも怯まずに「そんなの私の勝手。獲ったもの勝ちでしょ?」てな感じの顔して、相手を脅えさせるためだけにあるような鋭い牙を剥いて光らせ、爪もいつの間にか太くなり尖っていた。
(こ、怖い…つーか、ヤバくないか?この雰囲気。何とかしないと…)
が、慶の思いとは裏腹に二人の周りはどす黒い空気に包まれ、その空気の濃度は次第に濃くなってゆく…
そして
(このままじゃマズイって!誰か俺をこの状況から救ってくれ~!)
慶が心の中で嘆いていると慶を悩ます原因たちがピークを迎えようとしていた。
水樹は羽をバタつかせ、姫子は前のめりな姿勢になり今にも飛び掛かろうとしている。
(もうだめだ…)
慶が諦めかけた時女神はやって来た。
『水樹お姉ちゃん!おかあさんが次のお鍋持っていってだってー!』
と言いながらカリンがやってきたのだ。
すると
『はーい、じゃあ今行くね!』
さっきまでの雰囲気が嘘のように晴れて水樹がペカーっと笑顔でそう言いながら台所へと向かった。
『お兄ちゃん、何かあったの?』
『え?なんで?』
『だって…』
カリンが少し脅えた感じで言いながら指をさした。
そこにはさっきの雰囲気と変わってない牙を剥いた姫子がいた。
『って、お前はそのまんまかよっ!』
慶が思わずツッコミをいれると姫子はそのまんまの恐ろしい顔しながら慶をみた。
『な、なんだよ』
思わず慶がひるむと
『喰うぞ!』
と姫子が吠えた。
『こ、こらっ!変な事は考えるな!』
身の危険を察知した慶が後退りながら言うと
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