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『バカッ!やけ食いよ、やけ食い!』
姫子はそう怒鳴ると、さっき水樹の持ってきた、すき焼きを鍋ごとつかむと凄い勢いでガツガツと食べ始めた。
喰われると思っていた慶は冷汗を拭きながらため息をついた。
そうしている間にカレン、水樹がやってきてテーブルを囲む。
しばらくして右隣にいるやけ食い少女は「もう食べれない……」と鍋3つをたいらげて寝っころがりながら爪を使って歯を研ぎ始めた。
『ねえねえ、お兄ちゃん。』
不意に左隣にいるカリンが話しかけてきた。
『お兄ちゃんってドコから来たの?』
『そ、それは…』
慶が痛いとこをつかれ言葉を濁らすと
『私も気になっていたんです。』
『そうだな、気になるな。』
カレンと姫子も話に入ってきた。
『うーん…』
(どうしよう…どこからきたのかも分からず、ここと違う世界からきたなんて信じてもらえるかな)
慶は不安だった。
そして困った顔をしていると
『みんな、慶にもなにか事情があるのよ。ね、慶?』
水樹が助け舟を出してくれたが素直に乗ることは慶には出来なかった。
それは今までお世話になっておいて自分の事を聞かれれば誤魔化し教えないというのは何だか嫌だったからだ。
(よしっ!信じて貰えないかも知れないけど言おう!)
慶は決心すると
『わかったよ。』
と言った。
『慶、いいの?』
水樹が心配そうに言うと
『うん。ただ、みんなに信じて貰えない話かもしれないけど………それでも良いなら話すよ』
『慶、わたしは信じるよ』
水樹がそう言うとカレンやカリン、姫子も頷いてくれた。
「ありがとう」と言って、慶は自分の事を洗いざらい話す事にした。
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