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『砂漠の太陽』
同僚と夕暮れの街を歩いている。退勤後にも拘らず、互いの足取りは軽い。
「で? どうだった?」
同僚がにやにやしながら俺の顔を覗き込んだので、肯定の笑みを返してやる。
「そうかぁ! じゃ、二人とも晴れて昇給だな」
「微々たるものだけどな」
楽天的な同僚に釘を刺してやった。
「その僅かな潤いが、この不景気砂漠の乾きを潤すの!」
一本じゃ足りないか。
「消費税上がるらしいな」
一瞬表情が曇る。
「あぁ、憎き太陽。けれども、我らにゃオアシスがある!」
楽天的じゃなくて能天気だったか。
俺たちはカウンターの中央に陣取った。言わずともママがいつものやつを出してくれる。……ここがオアシスだってのは否定できないな。
「ん?」
同僚がメニューを開いていた。
「ママ、メニュー新しくなったんだ……」
同僚の目の色が変わる。
「ごめんなさいねぇ。経営が苦しくて……」
まぁ良心的な価格から一般的な価格になっただけの話。だけど、
「オアシスも干上がった……」
同僚も遂に干上がった……。
08/2/4
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