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『タイムマシン』
『以上を必ず実行すること。君の成功は君が保障する』
これで大丈夫。きっと俺ならこのノートの意味を理解できる。
一ヶ月で書き上げた分厚いシナリオをバッグに詰め、家の裏手にある山を登った。そいじゃあ、時間旅行と洒落込みますか。
幾何学模様の空間を高速で抜けると、そこは十年前の裏山だった。
懐かしい気分をかなぐり捨て、自分の部屋を目指す。両親は仕事、俺は学校。だから家には誰もいなかった。机の上に散らかる漫画本を整理し、そこに「成功マニュアル」を置いた。
これで俺は成功する。向こうに帰れば全てが変わっているはずだ。
裏山を駈け登り、タイムマシンに飛び乗った。
さぁてどうなったかな?
俺は目を疑った。大豪邸が視界を覆ったからだ。
すごい。興奮した俺は山を駈け降りる。
そして……。
俺と鉢合わせた。
「待っていたよ。君のお陰でこの通りさ」
目の前の俺ではない俺の憧れる自信に満ち溢れた俺が、俺のではない俺の家で俺を見下した。
――今日も俺は時を旅する。
さぁてどうしようかな?
08/2/11
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