11人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
『夢』
塾が終わり家へ帰る。頭の中を呪文のように英単語が回っている。
必要な参考書と筆記具を取り出すと、鞄をベッドの上に投げ出し、勉強机に向かった。書く。ひたすら書く。その内、汗が滲んできて、書いた傍からぼかしていくが、気にも止めない。どうせ読み返しなどしないのだ。書いて唱えてたたき込んで。今はそれだけでいい。あの学部じゃなきゃ駄目なんだ。
ライク・ア・マシーン。機械たれ。魔法の言葉。折れそうになったときの起爆剤。
何時だろう? 眠くなってきた。俺は機械。俺は機械。俺は機械…………。
ふと目が覚める。携帯を見ると、すでに八時を回っていた。
慌てて飛び起き、食パンを焼かずに口に押し込んで牛乳で流し込んだ。ネクタイを締め、スーツを羽織り、髪を濡らして寝癖を誤魔化し、駅に向かった。
改札を抜け、階段を降りると、いつもの電車が停まっていた。汗だくで申し訳ないと感じながらもぎゅうぎゅう詰めの車内に身体をねじ込む。
間に合ったぁ。課長に怒られずにすんだな。
ライク・ア・マシーンか……。
満員電車に揺られながら、夢を見たい、と思った。
08/1/31
最初のコメントを投稿しよう!