序章

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月が明るいといっても、鬱蒼とした木々の生い茂る森の中だ。足元など見えるはずが無い。 男は手探りで、近くに先の尖った石が落ちていないか探した。 目印になるように、通った場所の木にいちいち傷を付けておこうと考えたからだ。 (何か……、尖ってなくていいから、掌くらいの大きさの石が落ちていれば……。) しかしこの暗い森の中で、足元にある石を探すなんて不可能に近かった。 (くそっ!!何か……んっ?) 手探りで石を探していた男の手に、何か冷たく固い……鉄に触ったような感覚が伝わった。 男はそれを急いで掴み、持ち上げて月明かりに照らしてみた。 「こ…これは……。」 持ち上げたそれは……月明かりに照らされ、妖しく光る刀だった。刀身は黒光りした鞘にしっかりと納まっている。 森の中に刀が落ちてるなんて、普通有り得ないことではある。が、男にはそんなことはどうでもよかった。
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