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―天地を従えし皇帝の神槍―
―生死を定めし帝王の大剣―
パックの詠唱に対し、黒いマントの男は同種呪文で応じた。粋が通じる相手ということだ。かつての友のように。
―罪ありし者に虚空の断罪を、死すべき者に永遠の安息を―
―生ありし者に復讐の憎悪を、消えゆく者に介錯の慈悲を―
呪文詠唱というのは隙だらけ。しかし、詠唱中に相手を殴るという無粋な行為を、パックも黒いマントの男も選択しなかった。ただひたすらに自己の魔力を高めていく。
―大気を分かち、命を散らせ―
―苦痛を満たし、闇夜を燃やせ―
両者の呪文詠唱が完了したのは全くの同時だった。
―雷の槍―
―悪霊の焔―
パックが放った二股の雷槍を、豪火の大蛇が喰らいつくように迎え撃つ。凄まじい白光が、まるで夜の森の中に太陽が生成されたかのように炸裂した。
―不死鳥の舞―
黒いマントの男の詠唱に応じ、炎灼の大蛇が姿を変える。虹色に輝く豊かな翼と長い尾羽。
飛翔する不死鳥が翼を薙ぐ。放たれた幾千もの不死鳥の羽根が、炎の弾幕となってパックに襲い掛かった。
―千雷槍雨―
パックは雷の槍を掲げた。天に向かって光の柱が立ち昇る。
次の瞬間、空を覆う厚い黒雲から幾千もの稲妻が地表に降り注いだ。雷の槍が広域殲滅呪文と化した姿である。
しかし、戦いの中にあって、パックの意識は他に向けられていた。
ジョージ・パーキンソン。
我が弟子にして、親友の遺児。
これは俺の戦いであり、最期の戦いとなるだろう。
だからお前に託す。この先はお前の戦いとなる。お前に見せたいものがたくさんあるんだ。
地上最強の男パック・オルタナは、万感を胸に抱き、閃光のように剣を迸らせた。
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