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「うふふ……鬼ごっこ?」
私はそう言って彼を追いかけた。
彼は足をもつれさせながら私から逃げようと必死に走る。
それが可愛くて可愛くて、おかしくてたまらない。
どんなに逃げても此処は私の家の庭だから無駄なのに、彼はそれでも必死で。
あまりにもおかしいから笑うと、彼は何かに躓いたらしく転んだ。
私は好機とばかりにそんな彼の背中に抱き付き、彼の上へ馬乗りになった。
「やっと捕マエタ」
「ひぃぃぃぃっ!!」
「どうして逃げるの?」
私は心底不思議だった。
何もしていないのにどうして彼は逃げ、怯えるのだろう?
私はわからなくて彼の頬にそっと触れながら、どうしてかしらと呟いた。
しばらく私は首を傾げていたけれど答えが出ないので、やがて私は考えるのをあきらめて着物に手をかけた。
「な……何を……」
「貴方が喜ぶ事。貴方は肌を重ねる事が好きだから」
私はそう言って微笑んだ。
風に舞い散る白い桜の花弁が時々まるで違う花の花弁の様に赤かった。
女の血に染まった花びらだ。
私は上手くその赤い花びらを捕まえると、花びらについた血を唇に紅代わりに塗り付けた。
私のちょっとした恥じらい。
うっかり化粧をするのを忘れたから。
けれどそんな私をおぞましいものでも見るかの様に、彼は私を睨み付けてこう言った。
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