38人が本棚に入れています
本棚に追加
その図書館は、まるで違う世界にでも入ってしまったかのような錯覚に捕らわれてしまうほどだった。
奥が暗いせいもあって、どこまでも続いているような通路。
周りはぎっしりと本を詰め込まれた本棚が壁を造っている。
誰も来てないはずなのに何故か埃っぽくない通路の奥にいくにつれて、本棚には虫食いの葉みたいに所々本が無いのが目立ってくる。
それを目印に進むこと数分。
比喩ではなくてマジで広い図書館の一角に、山のように積まれた本に埋もれた少女を見つけた。
「やぁ──。何を読んでるの?」
僕の声に、今時珍しい丸眼鏡越しに少女は眠たそうな目を向けてきた。
「……。言って分かるの?」
「ぁ…。多分、分からない…」
「でしょうね」
そう言いながら、少女は視界を本に落としてしまったが、少しするとしおりを挟んで本を閉じた。
「ん…」
小さ声をこぼしながら、少女は本を少年に差し出した。
それを少年は笑顔で受け取り表紙を見て唸った。
「ぅ…。何て書いてあるのかさへ分からん…。英語苦手だしな…」
と、ため息をついた所に
「それ、ドイツ語」
「……」
少女の言葉に少年はガクリと頭を落としてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!