Pain

3/15
前へ
/23ページ
次へ
 俺の腹を鈍痛が襲う。同時に胃液が逆流し口のなかで血と胃液が混じり、不快感が更に増す。  痛みに耐えられなかった俺は膝をついて蹲った。 「けっ、今度やったらぶっ殺すからな」  どうやら男は満足したらしい。蹲り呻く俺を一瞥してから小屋を出ていった。  男によって開かれた扉が軋みながら閉じる。  それと同時に妹の表情に変化があらわれ始めた。弱々しい泣きっ面が憤激の色に染められていく。いつもの妹はこんな顔はしない。  ―――まさか 「ざけんじゃねぇぞこのクソジジイ!!」  突然あげられた怒号、それは間違いなく眼前の妹が発していた。  妹は憤激に顔を朱に染め、扉へと疾走しようとする。  俺はそんな妹を慌てて引き止めた。 「おまえはストラだな?頼む、おとなしくしていてくれ」  そう、こいつの名はストラ。俺と同じ銀髪を肩のあたりまで伸ばしており、まだ幼さが残るが端麗な顔立ちの妹だ。気が強く喧嘩っぱやいし口も悪いが、兄の俺を慕ってくれている。  ただこいつは俺の妹であってそうでない。こいつは妹の三つある人格の一人だ。他にもレナ、エリスという二つの人格がある。  ちなみに妹が多重人格になったのはつい最近のことだ。幸い皆俺を兄として認めてくれた 。 「でも………」 「俺に苦労をかけたくないならおとなしくしてくれ」  俺の説得に、ストラは渋々首を縦に振ってくれた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加