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俺の腹を鈍痛が襲う。同時に胃液が逆流し口のなかで血と胃液が混じり、不快感が更に増す。
痛みに耐えられなかった俺は膝をついて蹲った。
「けっ、今度やったらぶっ殺すからな」
どうやら男は満足したらしい。蹲り呻く俺を一瞥してから小屋を出ていった。
男によって開かれた扉が軋みながら閉じる。
それと同時に妹の表情に変化があらわれ始めた。弱々しい泣きっ面が憤激の色に染められていく。いつもの妹はこんな顔はしない。
―――まさか
「ざけんじゃねぇぞこのクソジジイ!!」
突然あげられた怒号、それは間違いなく眼前の妹が発していた。
妹は憤激に顔を朱に染め、扉へと疾走しようとする。
俺はそんな妹を慌てて引き止めた。
「おまえはストラだな?頼む、おとなしくしていてくれ」
そう、こいつの名はストラ。俺と同じ銀髪を肩のあたりまで伸ばしており、まだ幼さが残るが端麗な顔立ちの妹だ。気が強く喧嘩っぱやいし口も悪いが、兄の俺を慕ってくれている。
ただこいつは俺の妹であってそうでない。こいつは妹の三つある人格の一人だ。他にもレナ、エリスという二つの人格がある。
ちなみに妹が多重人格になったのはつい最近のことだ。幸い皆俺を兄として認めてくれた
。
「でも………」
「俺に苦労をかけたくないならおとなしくしてくれ」
俺の説得に、ストラは渋々首を縦に振ってくれた。
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