1人が本棚に入れています
本棚に追加
「私以外の人間なんてみんな消えてしまえばいい。
好きか嫌いかなんか関係ない。
そもそもそんなメンド臭い感情にみんな振り回されすぎだよ。
誰が誰を好きだとか、別にどうでもいいじゃん。」
ミシンの心地よいリズムに合わせての愚痴は、普段自分が無口だとは思えないくらい快調だ。
聞いてくれてるのは機械なんだけど…………。
よし、完成。
2週間前に見つけた生地で作ったワンピースは思ったよりいい出来だ。
「はぁ………学校やめてアメリカ行きたいねぇ。」
ミシンはどんなことを言っても、カタカタとだけ返事をくれる。
私にはその返事が背中を押してくれるように感じるんだ。
「ハルカがね~、隣のクラスの男子好きになったんだって。わざわざ私に話してくれなくてもいいのにね。」
コンセントを抜いたミシンはうんともすんとも言わない。
机の引き出しに隠してあるマイルドセブンを取出し、ベランダで火を点ける。
「はぁ…………アメリカ行きたい。」
上を見上げれば、私とアメリカを唯一つないでいてくれる空がある。
ミシンの音とマイルドセブン。
そして出来上がった服だけを残して、今日が明日にバトンタッチする。
私は毒煙を吐き散らかしながら、その様を見届けて、ベッドに入った。
最初のコメントを投稿しよう!