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カーテンフォール
流れる涙も枯れた後
世界は色を失っていた
いやに白く眩しい月がやけに印象的だった
この体はすでに俺ではなく
この心はすでに俺であることに悲鳴を上げていた
「死のう」
そう思うのは簡単だった
そうすることへの障害は何をするよりも少なく小さかった
若かっただけだと言われれば否定はできない
でも若さゆえ、負で満ちたそれが崩壊するのを止めるすべは無かった
その日の時間はゆっくりしていた
朝起きてからその時までの空白が気が遠くなるほどに長かった
夢から覚めた夢、そんな夢のような夢に支配された感覚
目を閉じた世界に逃げることも開けた世界で生きることにも
俺の望みはなかった
結論は一つだけ「終わること」
街は静かだった、俺だけが取り残された悲劇のステージ
劇や本ならありきたりな、使い古されたお話
そのストーリーを奏でながら俺はステップを刻む
月明かりのスポットライトに照らされ
悲劇のヒロインに送るワルツ
俺のラストダンス
月が真上に昇るころステージには亡がらだけが落ちていた
「カーテンフォール」
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