01.冬間夕映。

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聞くだけで、心底不愉快になる声。 相手はわかっている。 「ソレ、彼女? 手なんか繋いじゃってさぁ… どーせ、ヤることヤってんだろ?」 「あの、雅也く…」 「…放っておけ」 ヤツは、以前、俺にタコ殴りにされたらしい(殴った奴なんかいちいち覚えてねーし)。 それで、何かとこうやってケンカをふっかけてくるワケだ。 …正直、相手にするのは馬鹿馬鹿しい。 「シカトかよ。 …なぁ、お前はさぁ、」 「、きゃ!」 「…っ冬間!」 夕映の小さなさけび声に疑問を覚えてか、雅也はその方向にふり返ったのだが… よく見ると、先ほどの男が、夕映の腕を強くつかんでいて。 「…ま、…雅也く…」 「…冬間、ちょっと目ェつぶってろ」 「へ、…?」 …、ダァンッッ!! 構えるスキも与えない。 雅也は、夕映の目を手で覆うと、一瞬にして、男をかかと落としで床にたたきつけた。 手はそのままに、夕映を廊下に引きずっていく。 「ま、雅也くん、一体何が…」 「…あ? なんか、今隕石がおちてきたみたいだぞ。 もう跡形もないけどな」 「? 隕石…ですか?」 苦しい言い訳である。 …それでも、夕映に、こわい思いをさせたくなくて。 「…冬間、しばらくは俺から離れンなよ」 「? はいっ、モチロンです! 私は、お目付け役ですからっ!」 ……… 「…、クス …そうだったな…」 …なんで俺、笑ってンだろ。 …ホント、調子狂う…。
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