6260人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
------------
「兄さん、今日はパン?」
「いつもは夕映の弁当だからね、雅也は」
昼休み、屋上にて。
メール通り、三人は集まった。
正直、雅也の心情としては…のんきにご飯を食べて、のんきに会話をくりひろげていられるような、穏やかなものではなかった。
手もちぶざたに携帯を何度も開閉させながら、視界を空へ転じている。
「兄さぁーん、ムシ?」
「…うるせぇ」
「おやおや、不機嫌だねぇ。
何かあったのかい?」
理由なんて、気づいているクセに。
本当に、意地くそ悪い…
「…夕映の具合は、どーなんですか」
「あぁ、なるほど。
そのことが心配すぎて、怖い顔をしていたんだね」
『思いつかなかったなぁ』、と言わんばかりに。
わざとらしく、うそくさい…その言動に、雅也とユカリのため息が重なった。
「万里センパイ、ウソだってバレてますよ。
そんなこと言ってると、兄さんの機嫌がさらに悪くなります」
「ふふ、そうみたいだね。
…夕映は、普通にカゼだよ。
熱はないけど…少しせき込んでるみたいだったから、僕が休むように言ったんだ」
「…そーですか」
大まかすぎる説明に、はっきりとしたことは分からなかったが…
それでも、高熱にうなされたりしているワケではないということに、ひどく安堵している自分がいた。
「お見舞いにくるかい?」
「…いや、『来ちゃダメだ』って言われてるんで」
「ふふ、知ってる」
…殴りてぇ。
最初のコメントを投稿しよう!