10.初めての。

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------------ 「兄さん、今日はパン?」 「いつもは夕映の弁当だからね、雅也は」 昼休み、屋上にて。 メール通り、三人は集まった。 正直、雅也の心情としては…のんきにご飯を食べて、のんきに会話をくりひろげていられるような、穏やかなものではなかった。 手もちぶざたに携帯を何度も開閉させながら、視界を空へ転じている。 「兄さぁーん、ムシ?」 「…うるせぇ」 「おやおや、不機嫌だねぇ。 何かあったのかい?」 理由なんて、気づいているクセに。 本当に、意地くそ悪い… 「…夕映の具合は、どーなんですか」 「あぁ、なるほど。 そのことが心配すぎて、怖い顔をしていたんだね」 『思いつかなかったなぁ』、と言わんばかりに。 わざとらしく、うそくさい…その言動に、雅也とユカリのため息が重なった。 「万里センパイ、ウソだってバレてますよ。 そんなこと言ってると、兄さんの機嫌がさらに悪くなります」 「ふふ、そうみたいだね。 …夕映は、普通にカゼだよ。 熱はないけど…少しせき込んでるみたいだったから、僕が休むように言ったんだ」 「…そーですか」 大まかすぎる説明に、はっきりとしたことは分からなかったが… それでも、高熱にうなされたりしているワケではないということに、ひどく安堵している自分がいた。 「お見舞いにくるかい?」 「…いや、『来ちゃダメだ』って言われてるんで」 「ふふ、知ってる」 …殴りてぇ。
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