18.オシマイ。

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「ッ、かは…!」 「っ! 母さん、もうこれ以上は、…っぐ!」 「うるさいわよ、雅也。 …そんなに急かさなくても、あなたのお仕置きは後でゆっくりとしてあげるわ。 今はこの女を苦しめるとき、よ!」 「うぁ、っ…!」 ナイフの背を、夕映の腹に思い切りめり込ませる。 苦しさと嘔吐感から、夕映は深くせき込み、表情を歪めた。 己の行動を制止しようとする雅也の顔を、『黙れ』と言わんばかりに殴りつけながら…。 「一時間後まで、あと20分かぁ…意外と長いわねぇ。 …ま、いいけどね。 それまでの時間、たくさんの苦しみを与えればいいだけだもの」 夕映の髪、顔、服、縄で拘束された手足… ナイフで切られた痕、殴られたことにより出来たアザが痛々しい。 「…ねぇ、もっと泣いて喚いてよ。 『助けてくださぁい』って、泣きながら懇願しなさいよ…」 「っ…」 ナイフの先が、夕映の顎先にあてがわれて… 鋭利な痛みが、夕映の眉を潜めさせる。 「…私を殺すなら、それでも構いません。 でも…雅也くんは。 雅也くんだけは、解放してあげてください。 過去の呪縛から、…あなたから」 「…は? あなたは、何を言っているのかしら。 もしかして、殴りすぎちゃって頭がイカれちゃったのかしらね」 「イカれてなんかいません。 …聞こえなかったなら、何度だっていいます。 雅也くんを、あなたから解放してあげてください」 夕映の鮮明とした声色に、やよいは特に動じる様子も見せず…
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