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「…あ゛ー…痛ェ」
木がクッション代わりになってくれたお陰で、思ったよりも損傷は少ない(はず)。
少なくとも、表向きだけは。
…冬間を救える力さえ残っていれば、
「…バカみてぇだな、…自分」
改めて考えると、五段飛ばしくらいの勢いで階段をおりていったほうが、早くて安全だったのではないか、とすら
「…まァ、今更だがな」
体が、『早く冬間を救え』とせかしていたから、
それに従っただけだ。
「…、」
葉っぱでよごれた制服をはらってから、『近道』のおかげで、すぐ傍となった体育館倉庫を見すえて。
「…今、行くから」
たぶん、捕まってンのが、冬間以外の、見知らぬ誰かだったら…
俺は、こんなに必死にはならないと、自信をもって言える。
…なら、どうして…
冬間のことになると、こんなに必死になっている自分がいるのか、…なんて
「…哲学を解いてるヒマはねぇな」
…きっと、理由は今にわかるから。
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体育館倉庫内。
夕映は、妙に重たいまぶたをゆっくりと開きながら、まわりの状況をたしかめるように、目を走らせる。
頭と頬、全身をよぎる痛みに、眉をひそめて。
「…オハヨウ、夕映チャン」
「!
…ユウジ、さん…」
…思い、出した…
私、この人に捕まって…
…雅也くんを、おびきだすための。
…でも…
「…雅也くんは、来ません。
だから、」
「…『私を解放シテ』ってか?」
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