18.オシマイ。

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それをきっかけに、…ユカリの頬を、ナニかが伝う。 「泣くな。 ユカリ」 「っな、泣いてなんかいないわよ…! …兄さんの、バカ…」 「だから、悪かったって言ってるだろ。 …まったく、お前はいつまでたっても泣き虫だな」 「なっ! まだ昔のこと引っ張る気?! あたしが泣いてたのは、兄さんが意地悪するから…!」 「はいはい。 昔は…、」 トクン、 「? 兄さん?」 不意、言葉が途切れたことに疑問を覚えて、ユカリが声をかけるが… 『昔』。 …どうして、今まで忘れていたのか。 『はるき』は…、 「…やっと、ご到着か」 暴れるやよいの両手を拘束しつつも、万里が、至極落ち着いた声色で小さく呟く。 その言葉の通り、倉庫に響くのは…サイレンの音。 「もう少しで救急車がつくから、夕映は雅也に任せるよ。 ユカリ、警察までついてきてくれるかい?」 「モチロンです。 …じゃ、兄さん…頼んだからねっ」 有無を言わさず、という表現が的確だろう。 倉庫に入り込んできた数人の刑事に、やよいの身柄を引き渡し…その後ろを、万里とユカリが付き添う。 「…っ待ってくれ、母さん!」 そのまま見送るのが正解だとは知っていた。 でも、…それでも。 「…何よ、雅也」 バツが悪そうに、わずか表情を歪めながら振り返るやよいをまっすぐに見据えながら… 雅也は、息を飲んで。 「思い出したことがある。 …はるきのこと、だ」
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