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おもむろに掌をすくい上げて、…そのまま唇に宛てがう。
『敬愛』を示す、愛撫のように…。
「俺の居場所は、ここだけだ。
…俺は、これからもずっと…夕映の傍にいる。
もう、離れない」
「…絶対に、離してあげません…っ!」
互いを求め合うかのように、二人は強く強く抱き締め合う。
久しぶりに覚える温もりは、…更なる涙を誘った。
ずっとこの温もりが欲しくて…欲しくて。
わずかに身を離し、…指先を絡ませ、見つめ合い。
そのまま、唇を重ね合わせる。
久しぶりのキスは、うれしくて、苦しくて、…幸せで。
…うまく、息が出来ない。
「…ストップ」
「、雅也くん…?」
不意、唇が雅也の指先にさえぎられて。
どこか不安じみた表情を滲ませる夕映に、…雅也は視線を泳がせて。
「…これ以上すると、止まらなくなりそうだし。
閉じかけた傷口が開いたら笑えねーし…。
…それに、救急の人に見られたら困るだろーが」
「!
…ふふ、」
「っ、笑うな…」
「ふふ、…ごめんなさい。
…でも、」
身を乗り出して、…耳元に囁く。
『全部終わったら、キスも…それ以上のことも。
たくさんしましょうね…?』
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「…来てくれたのね、雅也。
一人?」
「あぁ。
…ユカリ、連れてきたほうがよかったか?」
「いえ。
…いいのよ」
あれから、何週間か経過して。
夕映の入院・退院を終え、落ち着いた頃…雅也は、刑務所へ向かった。
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