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「俺は…もう、アンタを恨んでない。
…誰も、恨まない」
「…変わったのね、雅也。
少し前のあなたなら、柵越しでも構わず、私に襲いかかって来たでしょうに」
「!
いつの話だよ…」
「…『あの子』のおかげ?」
『雅也くん』
…そうだ。
アイツがいるから。
どんなに傷つけても、突き放しても…アイツは、俺の傍にいるから。
「…雅也。
一つ、お願いがあるの…」
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暗所から、急に明るい所に出たからだろうか。
日の光が、いやに眩しく感じる…、
「!
雅也くん…っ」
門の所から、満面の笑みで駆け寄ってくるのは…もう、言わずもがな、
「待っててくれてたのか」
「はいっ!
ユカリちゃんたちは、家で待ってるそうです」
「そうか…」
「?」
不意、言葉を飲み込み…自分をじっと見つめる雅也の意図がつかめず、夕映は不思議そうに目を丸くしていた…が。
雅也は、夕映の後頭部をつかむと…おもむろに、自分の懐に引き寄せる。
「?
雅也く…」
「あのさ。
行きてェ所があるんだけど」
「行きたい所…ですか?
はいっ、ドコでもご一緒しますです!
もう二度と、雅也くんの傍を離れないと誓いましたから」
「!
…そうだったな、『約束』…だもんな」
「はい…っ」
久しぶりになるんだけどさ…
『墓参り』。
母さんの、分も。
頼まれたんだよ、…って、何笑ってんだ。
あ?
…そーだな、『嬉しい』…かもな。
ついでに、お前のことも父さんとはるきに紹介したいし。
…『俺の大事な人』だって。
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