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「?
夕映?」
「…雅也くん。
何か、悩んでること…あるんじゃないですか…?」
「、え?」
「たとえば、…将来のこと…とか」
「!」
核心をつかれた、と言わんばかりに。
雅也の目は、一度見開かれた後…おもむろに伏されていく。
「…やっぱ、気づかれてたか」
「雅也くんのことなら、何でもお見通しなのですよ。
…だから、一人で悩んだり…抱え込んだりしないでくださ、…」
…、フワ…
不意、雅也の懐に引き寄せられて…強く抱き締められる形となる。
息も出来ないほど。
『愛しい』と、温もり越しに伝わる…。
「ごめん、夕映。
…ありがとう」
「お礼を言われるようなことなんて、してないです。
…私でよかったら、話してください」
「、あぁ…」
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「今まで、進路を全く考えてなかったワケじゃないが…そんなことは、どうでもよかったんだ。
どっか適当なとこに就職して、食い繋げればそれでよかった。
、でも」
「…『でも』…?」
その頃、二人は夕映の家にいた。
どこか店に入っても構わなかったのだが…あまりに意気消沈している雅也を気遣い、夕映が提案したのだった。
「…『でも』…」
『でも』。
ユカリや万里先輩、…そして、夕映の傍にいるためには…このままじゃダメなのだと、気づいてしまったから。
「…何でもねぇ」
『気にするな』と、乱暴に頭を撫でられて…夕映は、自然と言葉を飲み込む。
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