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「大学行ってからやりたいこと探すって手段もアリだとは思うが、ハッキリ言って時間のムダだ。
だからといって、適当に短大や専門学校に行くのもな」
「えと…雅也くんは、何か得意なこととかありますか?
好きなことでもいいですし、趣味…でも」
「?
何…」
「私のお友達は、動物が好きだからペットのお医者さんになりたくて専門学校に行くそうです。
他のお友達も、料理が得意だから、その系統の専門学校を志望してるみたいです。
だから、雅也くんも…たとえば、小さい頃になりたかったものとか。
何でもいいから、『きっかけ』を探せばいいと思います」
お茶菓子にと用意したまんじゅうを両手に、夕映はやわらかく微笑んで。
「『きっかけ』なんて、本当に小さなことで…その辺に、たくさん転がってるモノです。
もしかしたら、その『きっかけ』は、このおまんじゅうかもしれませんし、その隣のモナカかもしれません。
だけど、それは手に取って味見したり、よーく観察しないと分からないものだから…いっぱいいっぱい、一緒に探して…悩みましょう」
満面の笑みで。
そして、どこか自信満々げに話す夕映に…雅也は、小さく笑い声を落として。
華奢(きゃしゃ)な手に包まれているまんじゅうを、おもむろに掴む。
「そーだな。
…やっぱ、お前に話して正解だった。
かなり楽になったよ」
「えへへ…。
雅也くんの役に立てたなら、それ以上の喜びはないのですよ」
「…大袈裟すぎだろ」
「本音だから、仕方ないのです」
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