19.将来の夢。

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「…ンなコト、冗談でも考えてんじゃねーよ…俺」 首を左右に振り、醜悪な思考を紛らわせて。 小学校時代の卒業アルバムに、手を伸ばすと…、 「? 小学校の頃は、ちゃんと書いてンのか。 …『うちゅうひこうし』…?」 …マジかよ。 「ンなモン、目指して簡単になれるよーな代物じゃ、…」 そこで、言葉が途切れる。 そこに続く文字に、目を奪われたからだ。 『おれは、星がすきです。 ほしくて、せのびしたけど、全然とどきませんでした』 「…本当に小学六年生の俺が書いたのか…はなはだ疑問だな。 ちゃんと漢字使えよ」 そんな一人ツッコミも、むなしく空気へ消えて行く。 雅也は、再度文字に目を滑らせた。 『そこには、大事なひとがいるからです。 だから、たくさん勉強して、むかえに行きます。 むかえに行って、たくさんあやまりたいです』 …『大事な人』。 『父さん』、…『はるき』。 「…」 『たまに、二人の声が聞こえます。 「待ってるから」、って。 だから、おれは毎日勉強して、うちゅうひこうしになれる大学にいきます』 …そういえば。 薄ら薄らとではあるが、昔の記憶がよみがえり始める。 確か、押し入れに… 「…あった」 押し入れの奥深く…薄汚く、古びた箱を引っ張り出して、その中からいくつかの本を手に取る。 数年分のお年玉をはたいて買った、『宇宙飛行士になる』、『宇宙理論』、『宇宙から見た地球』。
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