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なかば漫才じみたやり取りをくり返す二人は日常茶飯事だ、と言わんばかりに、ユカリは『飲み物買ってくる~』と、まるで何事もなかったかのように自販機のほうへ向かって行った。
それに気づくや否や、その後を万里が追って…
雅也が、ため息混じりに元の席へ腰かける。
「ったく…ドコまで人をからかえば気が済むんだ、あの人は」
「万里兄さんは、雅也くんがお気に入りだそうですから…構いたいんだと思います」
「…嬉しくないな、ソレ」
「ふふ。
…それにしても、徹夜をしてまで何の本を読んでいたんですか?
今日、小テストはなかった気がしたんですけど…」
「あぁ、違ェよ。
…その」
言葉の続きを待ち望むように、夕映は息を殺して。
雅也はといえば、妙な気恥ずかしさを紛らわせるべく、視線を泳がせている。
「…その、さ。
決まったかもしれない」
「?
決まった、とは…?」
「…将来のユメ」
「!」
夕映の表情が、みるみるうちに嬉々で染まっていく。
その反応は、予想出来ていたとはいえ…やはり、どこかくすぐったい。
「小学六年のときのアルバム引き出してさ、そこに将来の夢が『宇宙飛行士』だって書いてあったんだよ。
…まぁ、宇宙飛行士は無理でも…それに携わる研究。
そうだな、たとえば…宇宙理論学者。
星間距離とか、並びを使って…」
…なんて、楽しそうに…それでいて、とても嬉しそうに話す雅也くん。
もしかしたら、こんな雅也くんは…初めて見たかもしれません。
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