20.傍にいる。

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食った食った、と、心底満足げに笑みを滲ませ、つまようじを歯に挟むそのサマは、まるでおっさんだ。 「そーかそーか、万里がなぁ…。 ところで、夕映はどうなんだ? 彼氏」 「あ、…えっと…」 「夕映?」 不意、あからさまな気分の落ち込みを表情に滲ませる夕映に、蘭伽は目を光らせる。 「ちょっと、…いえ。 とても、雅也くんを困らせてしまって…」 …『マサヤ』。 『サクラマサヤ』。 『…やっぱりな。 佐倉から「ユエ」という名前を聞いたときは、まさかとは思ったが…。 高校も学年も同じだし、私の目に狂いはなかったようだ』 まぁ、かなり『意外』ではあったが…。 「困らせたって、…どうしたんだ?」 「…雅也くんの夢。 見つけたって聞いたときは、本当に本当に嬉しかったんです。 『宇宙学科』は、全国にも数ヶ所しかなくて…離れなくちゃいけないっていうのは、理解していたはずなんです。 …でも…その前に、M高校に転入するかもしれないという話を、…立ち聞きしてしまって。 あと数か月もしないうちに、雅也くんがいなくなってしまうなんて…考えたく、なくて」 本当は、困らせるつもりなんてなかった。 笑顔で『待ってます』って。 『いってらっしゃい』、って、言いたかった…。 「…悔しいです…っ」 寂しい、…寂しい。 でも、それ以上に…雅也くんが見つけた夢を、叶えてほしい。 「…本当にぶきっちょだな、夕映は。 …心配するな」 「え…?」
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