03.…ごめん。

13/15
6260人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
熱が、一気に上昇して 『、きゃあっ?!』 『…お前、ウルサイ…』 『えっ! あ、す、すみませ… って、あの! 入学式、出ないのですかっ?!』 『…誰が出るかよ、ンなめんどくせーモン。 行ったら、さらにめんどくせーことやらされっしな』 『?』 この時は、まだその意図がわかっていない夕映は、ただ不思議そうに目を丸くするばかりで。 青年は、おもむろに上体をおこした。 『…で…アンタ、何かあったのか? さっきからやたらと独り言聞こえてたんだが』 『、あ… その、今日、いきなり、ある大役を任されてしまって… 失敗してしまったら、どうしようかと…』 『…フーン』 その言葉を聞くなり、青年はポケットをまさぐると、小さな袋を取りだして、それを少女の手に置く。 『? これは…』 『やるよ、緊張したときには甘いモンが一番…だろ?』 口に広がる桃の味、 甘い甘い、 あなたの無邪気な笑顔 『? どうした? ボーッとして』 『っい、いえっ! …えと、ありがとうございますっ!』 『…ドウイタシマシテ』 それから、数週間後。 高校初の、クラス発表。 自分のクラスと、 …無意識のうち、あの桜の木の下にいたひとの名前を、さがしてしまった。 名前なんて、わからないのに。 聞いておけばよかったと、今さら後悔した。 『…でも、きっとすぐに逢えますよね!』 …希望どおり、すぐに逢えた。 彼とは、同じクラスで。 …なのに、
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!