6259人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
「…あの、雅也くん。
実は、逢ってほしい方がいて…」
「?
誰だ?」
まわりの奇異(きい)の目が少し気にはなっていた、が。
二人は、手を重ねたまま、ただ黙々と、ここまで歩いてきた。
教室にたどり着くなり、口を開いたのは、夕映のほうで。
「あ、ええと…
…秘密、だそうです」
「…『だそうです』?」
「と、とにかく…っ
お昼休みは、むかえにいきますね!」
名残おしげに重ねた手を離して、それぞれの教室に戻っていく。
まわりの根も葉もないウワサはあいかわらずだったが、…なぜか
今は、気にならなくて
「…ていうか、普通むかえにいくのって俺か」
------------
…昼休み、
夕映は予告どおり、雅也の教室まで迎えにきた。
うながされるがまま、屋上にたどりついたのだが
「私の友達の、原田まゆちゃんです!」
「は、初めまして…」
「?
…あぁ」
ソイツは、よく見れば、冬間がユウジに連れさられたとき、教室で見た女…
の気がする。
「…おい冬間、逢ってほしいヤツって…」
「っもー、あいかわらず愛想悪いんだから!
雅也兄さんはっ♪」
「………」
…あぁ、はてしなくイヤな予感がする…。
「朝ぶりぃ~、雅也兄さん!
あなたの妹の、佐倉ユカリでぇっす!」
「、え…妹だったんですか?!」
「知ってて言ってたんじゃないのかよ?!」
心から『初耳』、という反応を示す夕映に、雅也が即座にツッコミを入れた。
最初のコメントを投稿しよう!