01.冬間夕映。

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そうつぶやいて、寝返りをうった先に見えたのは… 『…入り口に、なにか寝そべってるな…。 しいて言えば、女みたいな……』 ……女? 「、はァアッ?!」 雅也は、信じられない、といわんばかりに声をはり上げると、体勢を勢いよくそちらへ向ける。 目を何度もこすって、よく見てみたが、やはりアレは女にしか見えない。 「…冬間…?」 なにげなくもれた名前に、ジグソーパズルの1ピースが、カチリと音をたてて、ピッタリはまった。 「…何やってンだ? アイツ。 しかも…転んだところ、何もねェし…」 いわゆる、『トジッ子』…というやつなのだろうか。 「、ったく…」 雅也は、しぶしぶと立ち上がると、夕映の元にゆっくりと歩みよる。 それに気づいてか、夕映が顔をあげた。 「、佐倉さん…っ! …あ、あの、中庭に、佐倉さんの姿がみえて… 行こうとしましたら、何かに引っかかってしまったようでして…ッ」 「…教えてやる、引っかかってしまった『何か』とは、お前の足だ」 「へ…? …お、お恥ずかしいです…」 頬をほのかに染めながら、少し恥ずかしげに笑う冬間。 …しかし… さっきも思ったが、可愛いな…コイツ ……『可愛い』? 「ッ違ェよ!タコッ!!」 「へっ?! …あ、す、すみませ…っ」 雅也は、全身にこみあげてくる羞恥を振りはらうように、顔を真っ赤にしながらどなった。 夕映は、反射的にあやまってしまう。
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