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「…っ言わない!」
言い訳、なんて
「…言わない…!」
フォローのしようがないくらい、俺はバカなんだ。
言い訳なんて、…そんな、バカな事を
「…夕映」
誰かがつぶやいたのかは、わからない。
確かめようとも、思わない。
…ただ、彼女の無事を、祈るためだけに
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…それから、一週間。
致命傷とまではいかないものの、少なくはない出血だからなのか。
夕映は、しばらく意識を戻すことはなかった。
「…雅也兄さん、一度家に帰ったら?
ほとんど寝てないじゃない」
「…良いんだ」
雅也は、病院に荷物を持ちこみ、隣のベッドで寝泊りしていた。
…といっても、ほとんど寝ていない状態だ。
目の下にはクマがはっきりと浮き出て、顔色は青…というより、薄い黒に近い。
…寝ても、一日三時間。
それ以外は、ずっと夕映の手をにぎり、目覚めを待った。
…ずっと、近くで
「兄さん、…」
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「ユカリちゃん、」
「万里…さん?」
病室を出て、扉を閉める。
その時かけられた声に、ユカリは目を見張って。
「…また、説教でもしにきたんですか?」
「ふふ、まさか。
…物足りないかと問われれば、『うん』と即答したいところだけど…
今の雅也をどなりつけても、何もおもしろくないからね」
「…さいですか」
この人は、不器用なだけなのか…それとも、本気で優しくないだけなのか。
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