06.戻れない。

3/10
6259人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
「…っ言わない!」 言い訳、なんて 「…言わない…!」 フォローのしようがないくらい、俺はバカなんだ。 言い訳なんて、…そんな、バカな事を 「…夕映」 誰かがつぶやいたのかは、わからない。 確かめようとも、思わない。 …ただ、彼女の無事を、祈るためだけに ------------ …それから、一週間。 致命傷とまではいかないものの、少なくはない出血だからなのか。 夕映は、しばらく意識を戻すことはなかった。 「…雅也兄さん、一度家に帰ったら? ほとんど寝てないじゃない」 「…良いんだ」 雅也は、病院に荷物を持ちこみ、隣のベッドで寝泊りしていた。 …といっても、ほとんど寝ていない状態だ。 目の下にはクマがはっきりと浮き出て、顔色は青…というより、薄い黒に近い。 …寝ても、一日三時間。 それ以外は、ずっと夕映の手をにぎり、目覚めを待った。 …ずっと、近くで 「兄さん、…」 ------------ 「ユカリちゃん、」 「万里…さん?」 病室を出て、扉を閉める。 その時かけられた声に、ユカリは目を見張って。 「…また、説教でもしにきたんですか?」 「ふふ、まさか。 …物足りないかと問われれば、『うん』と即答したいところだけど… 今の雅也をどなりつけても、何もおもしろくないからね」 「…さいですか」 この人は、不器用なだけなのか…それとも、本気で優しくないだけなのか。
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!