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「今宵も、月が綺麗だな……」
「はい。ごもっともです。」
桜野城─‥七階。
セナは下衣に薄手の淡い桃色の内衣を羽織り、自分の部屋の窓の縁に座って、満月を見上げた。
ヒョォオオォオオ……
何だか、肌寒くなってきたのか、セナは少し身震いをした。
(ついこの間までは、下衣だけで夜空を見上げていれたのに。)
秋も、もうすぐ終わる。
少しずつ冬が近いてきているのが肌で感じられた。
すると、セナの気持ちを察したのか、セナの部屋の真下の部屋でナィが、ニッコリ笑って言った。
「セナ様、あまり秋風にあたられるとお身体によくありません。それに、明日は会議があるのです。─‥これほどまで立派な月の事です。貴方様がいつまでも見ていたいお気持ちは、わかります。ですが、今宵はここまでとしていただきますようお申しあげます。」
ナィはまだ十四歳。
セナと一つしか変わらないはずなのに、声も、言葉遣いも、どこかセナよりも大人びている。
「わかった……では…おやすみ、ナィ。また明日。」
セナは短く言うと、窓の縁から飛ぶように降り、部屋に戻った。
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