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「気持ちいい…」
電車を出た和之は、背伸びをして呟いた。
電車の移動が2時間程かかったのも要因の1つだが、大きな要因はその駅全体の風景だろう。
なんというか、映画に出てくる田舎の駅を、そのまま持ってきたような駅だ。
「うーん…、やっぱり田舎は良いな…」
和之が思わずもらした言葉。
それは後続の二人の餌になったようだ。
「和之~、なんか親父クサ~い」
「いつもの事ですけどね~」
「…」
俺って、そんなに親父クサい?
とは聞かない。
前に聞いた時、約2時間もの間、延々とどこが親父クサいかを言われ続けたからだ。
「まっ、そこが和之らしさって感じだけどね~」
「ですね~」
そう言って、クスクスっと笑いあう二人を見て、和之は複雑な表情を浮かべた。
(俺らしいって言われても、全然嬉しく無いんだけどね…。)
そんな事を考えながらもとりあえず、改札口を出る。
夏の香りといったところか、都会では感じる事の出来ない草木の香りに、少しばかり心を奪われる。
そのせいもあってだろう、近づいて来た人影に全く気づかなかった。
「久しぶりだな、和之。元気してたか?」
「幸谷!!」
突然、声をかけられた事も影響してー、単純に親友との再会が嬉しいかった事もあってか、声が大きくなってしまった。
その様子に幸谷は穏やか微笑むと言った。
「嬉しい反応だな。とりあえず乗れよ、車はそこに止まってる」
和之は幸谷の指さす方を見て固まった。
そこにはかなり立派なキャンピングカーが止まっていたからだ。
和之はかなり驚き口を開く。
「幸谷、お前どうやってー」
しかし、その言葉は最後まで紡がれる事はなかった。
「企業秘密だ」
学生時代何度も聞いた幸谷のその言葉に和之は苦笑する。
「…変わらないな」
幸谷はニヤリと笑い言う。
「お互い様だろ?」
「だな」
二人はお互いの様子に笑いあっていた。
「うわっ!!何これ!!幸谷、マジ有り得ない!!」
あまりの大声に驚いてビクリと体を震わせた幸谷は、振り返り、その原因が自分の友人である水上 奈央だと理解して、軽くため息をついて呟いた。
「…変わってないな」
その言葉に和之は苦笑しつつ頷いた。
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