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キャンピングカーの中は物凄い設備だった。
トイレやシャワーが完備され、小さいながらも寝室とリビング、更にキッチンまである。
和之達が幸谷に詳しい話を聞くと「キャンピングカーでは無く、小規模なツアーバスだからだ」と言われたが、よく解らなかった。
その後、幸谷は運転席に向かっていき、残りの面子は久しぶりの再会という事もあり、リビングで世間話をして盛り上がっていた。
「にしても、大学生になっても全然変わんねぇな~、和之は」
「宏隆だって全然変わってないだろ?」
「まあな…。っても大学に入ってからは喧嘩しなくなったけどな」
そんな会話が一段落したのを確認して奈央が喋り始める。
「てかさ~、マジ快適だよね~!!幸谷に頼んで正解って感じ」
その言葉に賛同しつつ、宏隆は言った。
「つうか幸谷って、いっつもすげえもん持ってくるけど、金ってどこから出てんだろうな~」
「…考えてみれば変だよね。普通、フリーターがツアーバスとか持ってる訳ないしね…」
今頃気づくのも変な話だが、幸谷は毎回イベント事で何かしらの用意をしてくる為、皆はそういう状況に慣れていた。
もしかして、と呟き奈央は言う。
「ー全部、カード支払いとか?」
和之は「それはないよ」と呟き言う。
「幸谷は、おばさんのカード嫌いを受け継いでてカードは持ってないよ。更に言えばローンも使えないはずだしね…」
その和之の言葉に、眉をひそめて返すのは亜紀であった。
「…それは変ですね。ツアーバスの値段は解りませんが、そんなに安い物では無いはずですよ?それを一括で購入出来るだけのお金が、果たしてフリーターの幸谷から出てくるのでしょうか?」
それに対して宏隆は苦虫を潰したような顔で呟いた。
「もしかして幸谷って、すんごくヤバい奴なんじゃね…」
「もしかして、スパイとか?」
「いや、暗殺者の可能性もー、のわっ!?」
突然、物凄い轟音と衝撃、更に座ってられない程の横揺れが車全体を包んだ。
「何なのよ~!!」
涙目で頭を抑えてそう叫ぶのは奈央。
「…もしかして、今までの話しが幸谷に聞こえてて、怒りのドリフト走行とかしてんじゃ…」
「そんな訳ないだろ!!ドリフト走行でこんなに小刻みに揺れるか!!」
男達は、こんな状況でもくだらない漫才に励んでいた。
その後、緊張感の欠片もない悲鳴が所々であがったが、元凶の横揺れが止み、すぐに平穏を取り戻した。
「はあ、地震かな?」
「それが一番妥当だな…」
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