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季節は夏ー。
前年度に比べ、比較的過ごしやすい夏であるー。
「…暑い」
が、待ち合わせ時間を過ぎても、誰一人こない状況となれば話は別。
都会特有のコンクリートからの照り返し、更に駅前の開けた場所が待ち合わせ場所という事が追い討ちをかけ、彼、結城 和之は心労を募らせていた。
優しげな顔立ちをしているが、何らかの武道をしているのか、肩幅が広くがっしりとした青年である。
それはさておき、暑さでうなだれている和之の頭に影が掛かった。
「お久しぶりですね、和之」
その穏やかな声こそ、和之の待っていた人間の1人である。
「久しぶりだね、亜紀」
黒瀬 亜紀。
和之が高校生だった時の友達だ。
彼女は白いワンピースに軽めの上着、更に白い帽子という出で立ちであった。
「今日は楽しみだね」
「そうですね。高校の時以来ですもの」
今日、集まる事になったのは一週間程前に水上 奈央から送られてきた、
高校時代の仲良しグループで、キャンプに行こう!
というメールからだった。
高校卒業後、各々が各々の進路に進み、個々で遊ぶ事はあってもグループで遊ぶ事はほぼなくなっていた。
そんな中での誘いに、皆は今回の企画に大賛成であったが、企画者が未だに姿を現さない事に、和之は思わず溜め息をついた。
高校の時も彼女は、企画を立てて起きながら遅刻し、全力疾走で集合場所に現れていた。
アパレルの仕事について少しは変わったかと思ったが、そういう所はちっとも変わって無いらしい。
噂をすればなんとやら、此方に向かって全力疾走する人影が1つ。
「ごめん!!マジ遅れた!!」
ハァハァと荒い息を吐きながら、彼女ー、水上 奈央は和之達に向かってそう言った。
日除け程度の帽子と上着、Tシャツに丈の短いGパンというラフな格好だ。
更に今年の夏はエンジョイしたのか、肌は小麦色に染まっている。
「良いよ。いつもの事だし」
「ええ。いつもの事ですしね」
そう言ってニコニコと微笑む二人に奈央は何度も謝った。
「さてと、こっちに集まる面子はみんな揃った事だし、そろそろ行こうか」
和之はそう言って立ち上がる。
「OK~!!んじゃ、行こっか!!」
「ええ」
三人は次の目的地に行く為、駅構内に入っていくのであった。
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