寄生のライフサイクル

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生きるための選択…ま、当たり前ですがね。 その彼らですが、成熟後、カタツムリの別の器官に移動します。 「デンデンむしむしカタツムリ。おまえの目玉はどこにある?」 の、大触覚。いわゆる「目」に移動するんですよ。 そうなるとカタツムリの行動すら、不可解な物になります。 カタツムリのことを触ったことがある人、居ますか? …まぁ、ほとんど居ないでしょうね。私も大学の研究室ではじめてカタツムリと接したかもしれません。 カタツムリは外的な刺激、触られたりすると、すぐにソノからに身を隠します。 一番に、目を擁する大触覚などをね。一番大事な器官の一つですからね。 そのセンシティブな器官に、レウコクロディウムが寄生します。普通に考えれば、大触覚を収縮して、縮こまりそうな気がしますでしょ?実際はそうはなりません。 レウコクロディウムが成長し、大触覚の先端、眼の方に移動する頃からカタツムリは、生活圏、木々の葉の先端、より陽のあたる表面先端に移動し、そこで硬直状態になります。 そして大触覚を、伸ばします。 さらに、先端に居るレウコクロディウムが、蠢(うごめ)くのに合わせて、大触覚を振るわせます。 まさしく、その先端は蠢くイモムシのようであり、それが目に付き木の葉の先でふるえている。 まぁ、捕食者の鳥類からすれば、エサが手を振ってくれているようなものです。 この行動が意味することはなんでしょうか? 大触角を伸ばして振動させるまでは何らかの物理的な方法があるかもしれませんね。 しかし日向に出るという行動は? ちなみにこのレウコクロディウム、体内から明るさを感知する方法はありません。 つまり、この行動は、カタツムリ自身に自発的に日向に向かわせる「何か」がなければ成立しないのです。 実は他の線虫類も偶発的に補食されやすい環境を作り、別の捕食者、より高次の宿主に移動するケースがあります。たとえば、魚の「脳」に寄生することにより魚がまともに泳げなくなり、海鳥に補食される。 しかし、これは偶然の要素も否定できないでしょうね。 レウコクロディウムのケースが大きく違っていることは分かってもらえると思います。 異常行動に規律がある。あたかも目的を持っているようにすら見られるからだ。 つまり、ほとんど「脳」と呼べる組織を持っていない線虫に、カタツムリは簡単にその全身を乗っ取られてしまうんですよ。
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