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やがて二匹の蝶は、長い指に止まった。
力強さと繊細さのバランスがとれた、理想的な男の人の手だった。
その手の主は、まるでそこに椅子があるかのように何もない空間に座り、蝶が止まっていない方の手で手招きした。
私を呼んでいるの?
そう思う前に、私の体は手招きに吸い寄せられていた。
「初めまして。よく来たね」
そう言って、その人は笑った。
低めの声が心地よかった。
黒く、艶のある少し長めの髪。
切れ長の瞳が印象的な、均整のとれた顔立ち。
筋肉質ではないが、がっしりとした広い肩幅。
私はその人に魅入っていた。
私の口は挨拶もせずに、無意識にその言葉を発していた。
「貴方の名前を教えて下さい」
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