A day.1

2/16
前へ
/26ページ
次へ
「シ…オ……」 そう呟く自分の声で目が覚めた。 見慣れた天井が視界に入ると、先ほどまでの興奮が一気に冷めた。 「三谷先輩という人がいながら、私は……」 目が覚める寸前、『紫央』と名乗ったその人の笑顔が頭をかすめる。 私は慌てて、愛しの先輩の顔を頭に浮かべた。 少し色素の薄いサラサラした髪。 お菓子作りに熱中している時は、大きめの目をキラキラさせていた。 少し子どもっぽい笑顔が年上なのに可愛くて…… 「うん。先輩のこと、大好き!」 私は声に出してその事実を確認すると、一気に体を起こした。 その時、めくれた掛け布団から、ひらりと何かが落ちた。 「あ……手紙」 寝ている時に下敷きにしてしまったのか、白い封筒はいくつかシワがついていた。 「大丈夫。気持ちがこもってるもん」 そう自分に言い聞かせて、手紙を学校鞄の中に入れた。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加