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「シ…オ……」
そう呟く自分の声で目が覚めた。
見慣れた天井が視界に入ると、先ほどまでの興奮が一気に冷めた。
「三谷先輩という人がいながら、私は……」
目が覚める寸前、『紫央』と名乗ったその人の笑顔が頭をかすめる。
私は慌てて、愛しの先輩の顔を頭に浮かべた。
少し色素の薄いサラサラした髪。
お菓子作りに熱中している時は、大きめの目をキラキラさせていた。
少し子どもっぽい笑顔が年上なのに可愛くて……
「うん。先輩のこと、大好き!」
私は声に出してその事実を確認すると、一気に体を起こした。
その時、めくれた掛け布団から、ひらりと何かが落ちた。
「あ……手紙」
寝ている時に下敷きにしてしまったのか、白い封筒はいくつかシワがついていた。
「大丈夫。気持ちがこもってるもん」
そう自分に言い聞かせて、手紙を学校鞄の中に入れた。
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