~ハンカチ~

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時折、かする泣き声。 頬につたう涙。 彼には何て言葉をかけたらいいのか分からなかった。 いつものように自分の特等席で読書をしようと思い、来たらこのありさまだったのだ。 彼女と同じ黒を基調とした制服。 蒼い瞳を困ったように泳がせたあと彼は意を決して 「今日……良い天気だな」 精一杯の言葉だった。 『何を言っているんだ……俺……』 気の利いた言葉の一つもかけられないことに唇を噛み締める。
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